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月夜の海、朔の森

万葉集と古今和歌集・・・その1

 古今和歌集は、日本最古の勅撰和歌集です。(勅撰とは天皇の命令で選ばれたという意味)
選者の一人(代表と言ってもいい)である紀貫之が、その序文(仮名序)を書いています。
そこにはこうあります。
「やまと歌は、人の心を種として、よろづ(万)の言の葉とぞなれりける」

 万の言の葉…から、『万葉集』を連想するのは、ごく自然な感じがしませんか?
実際、古今和歌集は、成立当時『続万葉集』とも呼ばれていたようですので、万葉集と古今和歌集の関係も、ただならぬものがあったと、つい私は妄想してしまいます。
 実は、通説とされる万葉集の成立と、古今和歌集仮名序における通説での解釈について、私はいくつかの引っかかりを感じているのです。
 少しずつ、その引っかかりをほどいてみたいと思います。
 
 先ず押さえておきたいのは、古今和歌集が最初の勅撰和歌集であった事。つまり天皇の命令で編纂された、最初の和歌集であるという事ですね。
 これに対して、万葉集は、
①大伴家持(たった一人で編纂したわけではないでしょうが、少なくとも最終的な代表責任者だと思われます)が、天皇とは無関係で編纂している事。
 更に、万葉集には、
②有間皇子や大津皇子など、天皇に背いたという罪人(無実なのですが)の歌が、少なからず収められている事。
③大伴家持自身が、桓武天皇により無実の罪を着せられていた事…等が思い浮かびます。


 万葉集に収められている中で、最も有名な歌人は柿本人麿ではないでしょうか。宮廷歌人でありながら、その素性がよく分からない謎の人物でもあります。 
 梅原猛さんは、学会の出した通説をひっくり返し、柿本人麿は無実の罪で処刑されたのではないかという説を唱えました。この事の検証には、普通学会で有力視される『正史』(大本営発表ですか…)よりも、地方に残る伝説と、何より人麿自身の歌を丁寧に読み取る事を基本に置いています。ここでは詳しく触れませんが、私は梅原猛さんの説に、多大な共感を覚えました。興味のある方は、梅原猛著『水底の歌』をご覧下さい。

 もしも、梅原さんの説(細部はともかく、人麻呂が無実の罪で処刑されたという説)が正しいとすると、万葉集には、天皇に背いたとされる(無実の)罪人達の歌が、かなりたくさん収められている事になります。
 そこで、一つ目の疑問が生まれます。
なぜ、最初の勅撰和歌集である『古今和歌集』が、『万葉集』を意識して作られているか?
 意識して…というのは、決して私の妄想だけではなく、成立当時『続万葉集』と呼ばれていた事や、万葉集に倣って20巻にしている事が、通説でも言われているのです。天皇に背いて処刑(自殺に追いやられた皇子もいる)された者達の鎮魂歌が、何故?

 もちろん、万葉集の歌全てが、無実の罪で死んだ者達の鎮魂歌だとは言いませんが、柿本人麿までを含むとすれば、決して無視は出来ない数の鎮魂歌(天皇に背いたとされる人の)が収められていることになると思うのです。

 そこで、次の疑問です。
 古今和歌集仮名序に、紀貫之はこう書いています。
「古(イニシヘ)よりかく伝はるうちにも、平城の御時よりぞ広まりにける。…中略…かの御時に、正三位柿本人麿なむ歌の聖なりける。…中略…これよりさきの歌を集めてなむ、万葉集と名付けられたりける。」
 簡単に説明すると…古来よりこのように伝わった中でも、平城天皇(へいぜいてんのう)の時代に、特に世の中に広まった。その天皇の時代に、柿本人麿という者が歌の聖となった。これより前の歌を集めて、万葉集と名付けた。…となります。
 また、真名序(漢語で書かれた序文。今で言う、対外向けに英訳を付けるようなもんですか)には、次のように記されています。漢文は難しいので、現代語訳で紹介します。
「昔、平城天皇は臣下に命じて『万葉集』を撰進された。それから今まで、天皇の御代は十代、年数は百年を過ぎた。」
 いかがですか?引っかかりません?
 天皇の命令であれば、勅撰ですが、万葉集は勅撰ではありません。しかも、平城天皇は、平安時代の人。奈良時代に万葉集が出来ているのに?
 つまり、二つ目の疑問は
序文に書かれている内容が、実際の記録と合わないということ。
(万葉集は平城天皇が臣下に命じて撰進された・・・とあるが、勅撰ではない)
(万葉集ができたのは奈良時代なのに、それを命じたはずの平城天皇は平安時代の人で、まだ生まれていない)


 さて、これらの疑問について、次回は歴史的背景を見ながら考えてみることにします。
なお、この文章は以前に別のブログでも公開したことのあるものです。若干の修正を加えながら、二度目のアップになります。

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